オートフラップゲートは起伏ゲート形式です。
扉体が、下部支承(軸受)を回転中心として、起立・倒伏作動を行い、水門・樋門の通水部を閉鎖、開放します。
樋門設備・ゲート開閉形態図
■ゲート全開状態
扉体が全倒伏し、樋門通水部を全開放します。
■ゲート全閉状態
扉体が全起立し、樋門通水部を全閉鎖します。
オートフラップゲートの扉体は、内部を完全な気密構造とし、水中において適正な浮力が発生するよう設計・製造されています。
これにより、ゲート上流側、下流側の水位変化に的確に反応し、「水圧力」と「重力」の自然エネルギーのみを作動力として、扉体が自動的に起立作動、或いは倒伏作動を行い、下流側から上流側への逆流を防止し、反対に上流側から下流側への円滑な排水を行います。
扉体の自動作動には「管理者による操作」、又は「電気的な制御」は一切必要としません。
(a) 自動止水作動
扉体は、ゲート下流側水位の上昇に対応し、同水位による浮力、及び水位差水圧力によって自動的に起立作動します。
水門の通水部を、下方から上方向に閉鎖する形態で、全ての扉体作動範囲でゲート下流側から上流方向への水流移動(逆流)を防止します。
自動止水作動は、扉体頂部が常に水面から突出した状態であるため、浮遊草木、塵芥等の挟み込み障害が発生し難い作動形態となります。
■自動止水作動(中間開度)
下部・両側部の3方向水密機能により下流側から上流方向への逆流を防止します。
■自動止水作動(全閉作動)
下部・両側部・上部の4方向水密機能により、通水高を超えた下流水位の上昇に対し確実な止水を行います。
■自動止水作動状況(防潮水門)
下流側(海側)から上流(川側)方向への潮位遡上を防止します。
下流側の波立ち(波浪)に対し、扉体は安定した作動状態を保持します。
扉体頂部が水面から突出した状態で自動止水作動を行います。
浮遊物の噛み込み等が発生し難い作動形態です。
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(b) 自動排水作動
扉体は、ゲート上流側水位の上昇(又は下流側水位の低下)に対応し、上流側水位による水圧力増加と扉体自重によって自動的に倒伏作動します。
ゲート上流側から下流方向へ、扉体頂部を越流させる形態で、自然排水を行います。尚、扉体下部、側部からの排水は行いません。 (流下物が挟まり込む障害の発生を防止するためです。)
上流側からの排水量が増加した場合、扉体は更に下流側に倒れ込む形態で自動的に開放度を高め、上流側水位を過度に上昇させることなく円滑な排水を行います。
■自動排水作動(排水量少)
自動止水排水時の必要水位差は、概ね0.15~0.25m程度です。
■自動排水作動(排水量大)
上流側からの排水量が増大すると、扉体が追加的に自動的倒伏作動を行い、開放度を増加して円滑な排水を行います。
■自動排水作動状況(防潮水門)
上流側(川側)から下流(海側)方向への円滑な自然排水を行います。
扉体頂部を越流させて排水する形態であるため、流草木や塵芥等を円滑に流下させることができます。
上流側からの排水量増加、又は下流側水位の低下に的確に対応した自動倒伏作動を行い、安定した排水を行う事ができます。
[詳細は作動状態映像へ]
オートフラップゲートは、油圧方式の作動制御機構によって常に自動作動速度を制御し、安定した自動作動性を発揮することを特徴とします。
作動制御機構は、扉体に固定結合された駆動軸、及びトルクアーム、これと連結した両ロッド式油圧シリンダ、並びに油圧制御回路によって構成されます。
作動制御機構は、単純・堅牢な構造・機構で、長期間の使用に対応した高い耐久性を有します。
(a) 自動作動速度制御機能
扉体の自動起立、並びに倒伏作動各々の最大速度を、油圧制御回路中の流量調整弁によって制限します。
止水時の自動起立作動は、急速な水位変化に対応可能とするため、比較的速い作動速度に設定されます。
一方、排水時の自動倒伏作動は、急激な水位変化にまで追従作動する必要はないため、比較的穏やかな作動速度に設定されます。
これにより、波浪等によって扉体が過度に揺れ動く現象(バタツキ)が防止され、安定した自動作動性が発揮されます。
従来式の自動ゲート設備で問題となっている波浪時の扉体・戸当間の激しい衝突現象や、扉体の急速倒伏等危険な現象が常に防止され、設備の安全性、耐久性が確保されます。
(b) 強制開閉操作機能
油圧制御回路の簡単な切替操作により、扉体の自動作動を停止させ、油圧ポンプ操作による油圧シリンダ作動により扉体を強制的に起立・倒伏(ゲート開閉)作動させる事ができます。
設備の点検・整備時に扉体を強制的に作動、又は状態保持させる事ができます。
又、設備運用上、必要に応じてゲート全閉、全開作動、又は開度保持を行う事ができます。
自動/強制の切替、並びにゲート強制開閉作動の操作装置は堤防上の安全な場所に設置されます。遠隔操作によって行う事も可能です。
扉体と油圧シリンダの同調作動
扉体の起立・倒伏作動と油圧シリンダのロッド伸・縮作動は常に同調します。
扉体の自動作動時、油圧制御回路の流量制限により油圧シリンダがダンパー的な機能を発揮し、扉体の過度な揺れ動き、又は急激な倒伏動作等を防止します。
■油圧シリンダ・トルクアーム(駆動装置室)
油圧シリンダ、トルクアーム等はゲート側壁内の駆動装置室に設置されます。
駆動装置室は水路と隔絶され、土砂・流水、及び水勢生物等の侵入が防止されており、各機器の長期間の耐久性を確保します。
■扉体の管理操作状況(フラッシング操作)
扉体を強制的に起立作動させ、上流側に一時的に貯水し、これを一気に放流することで上・下流水路に堆積した土砂・塵芥等を洗い流す(排除する)事が出来ます。